コダックアラリス スキャナー導入事例:自動車登録の紙書類をスキャナーで素早く正確にデータ化、オンボードプロセッシングと詳細な設定で速度も精度も大きく向上
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自動車を販売したときに国交省に登録申請するためのシステムを販売するエムエスピー販売株式会社。車検証などの紙書類をドキュメントスキャナーによりデータ化しており、読み取り速度や精度に課題を抱えていたのを、コダック アラリス製品で解決した。紙の書類のデータ化にともなう課題や、今後の可能性について話を聞いた。
株式会社エムエスピー/エムエスピー販売株式会社
代表取締役 大橋 正康
車検証など登録書類をスキャンしてOCR処理
われわれが自動車を入手するときには、多くの場合、ディーラーで購入する。するとディーラーは、自動車検査登録(車検)制度のもと、ディーラーの業界団体である一般法人日本自動車販売協会連合会(自販連)に書類を提出し、自販連が国土交通省(国交省)に登録申請を行う。この手続きは何度かの変遷を経て、現在は、ディーラーが自販連に提出した車検証などの書類をもとに、自販連がデータ化し、国交省に申請するようになっている。
エムエスピー販売株式会社は、この登録車検査登録のシステム「アプリライター」を自販連に販売している企業だ。「自販連には全国で52の支所があり、そのうち47支所に弊社のシステムが採用されています」と、エムエスピー販売株式会社 代表取締役社長の大橋正康氏は自信をのぞかせる。同社ではそのほか、継続検査支援や、登録必要書類管理、軽自動車検査、希望番号など、関連するいくつかのシステムも開発し販売している。
登録車検査登録システムに求められる最低限の機能としては、ディーラーの書類をもとに、自販連が手でコンピュータにデータを入力し、そこから国交省に提出することになる。しかしそれでは手間がかかり、間違いも発生する可能性がある。そこでエムエスピー販売のアプリライターでは、ディーラーの書類をドキュメントスキャナーで読み込み、OCRでデータ化して入力している。アプリライターで使うドキュメントスキャナーとして、以前は他社製品が用いられていたが、新たにコダック アラリス製品の採用を決定し、現在入れ替えが進んでいる。
読み取りが遅い、しかも詰まっていくという課題
それまで使っていた他社のドキュメントスキャナーでは、いくつかの課題を抱えていた。そのような中で、2020年にコダック アラリスのドキュメントスキャナーの提案を受けて、テストしてみたところ、課題を解決してくれ安定して動作することから、すぐに採用が決まった。「お客様にもテスト的に入れてみたところ、好評だったので、全国的に入れ替えをしていくことにしました」と大橋氏。現在、支所ごとのスキャナーの更改タイミングに合わせて入れ替えを進めている。
採用したコダック アラリスのドキュメントスキャナーは、A4対応のスタンダードモデルであるS2000シリーズの、S2060wとS2085fだ。フラットベッド型で高速に読み取れるS2085fは支所のLANにつないで共有する使い方を、それよりややコンパクトで畳めるS2060wは各PCに接続する使い方を想定して、それぞれの支所の利用形態に合わせて選ぶようになっている。
従来のドキュメントスキャナーで課題となっていたこととしては、まず読み取りスピードがある。自販連の大きな支所では、一度に100〜200枚ほどの書類を読み込ませることもある。このとき、以前の機種ではOCR処理などでPC側に負荷がかかっていたようで、大量に連続して読ませると、どんどん詰まっていくように遅くなっていった、と大橋氏は説明する。
この課題が、コダック アラリスのドキュメントスキャナーに入れ替えたことで解決された。まず読み込みそのものの速度として、S2085fは1分間に85枚を読み込む性能、S2060wは1分間に60枚を読み込む性能を持つ。さらに、コダック アラリスのオンボードプロセッシング機能では、スキャナー本体に搭載された専用プロセッサでイメージング処理を行うため、PC側に負荷をかけず、効率的に処理できる。これによって、大量のスキャンでも問題なく続けて読んでくれるようになった。
OCRの誤読が続く問題も解決、設定を作り込んでさらに精度向上
また、以前のドキュメントスキャナーでは、OCRの誤読も課題となっていた。大橋氏も「何が原因かわからない誤読が続いて悩まされていた」とのことだが、コダック アラリスに入れ替えたことで、この問題もなくなった。
OCRの精度に関しては、PC用のソフト「Capture Pro」も大橋氏の評価は高い。Capture Proは詳細な設定ができるぶん、設定が難しい面もあるが、そこがアプリライターには合っていたのだという。たとえば車検証には背景に模様が入っているが、これを読み飛ばすように設定することで、イメージがクリアになってOCRの誤読が少なくなるとのことだ。こうしたアプリライター向けのベストなCapture Pro設定をエムエスピーで作り込んで配布し、自販連では設定に手を触れないようにして使っている。スキャナーに付属するCapture Pro無償版だけでなく、処理件数の多い支所では有償のフルバージョンを購入しているところもあるそうだ。
そのほかの課題としては、以前のメーカーの製品ではなかなかモデルチェンジがなされなかった点もあった。コダック アラリスの製品では定期的にモデルチェンジがあり、性能や機能の向上が見込めるわけだ。コダック アラリス製品に入れ替えたことについて、ユーザーである自販連の反応はどうかというと、「お客様は動いて当然だと思っているわけで、クレームはいただいてないので、安定して動いているのだと思います。日常の処理に溶け込んでいて、特段何も言うこともなく、落ち着いて使っていただいているようです」と大橋氏は苦笑ぎみに答えた。
関連システムでも書類のデジタル化を推進
2023年からは車検証にICタグが埋め込まれており、将来的には印字内容を読み取らなくてもデジタル情報を取得できるようになるだろう。しかし、当分はドキュメントスキャナーの役割が大きそうだ。
関連するいくつかのシステムでも、ドキュメントスキャナーが活躍している。たとえば「希望番号システム」だ。ナンバープレートの希望番号を申請すると、希望番号予約済証が紙で発行される。これを自販連が管理し、ディーラーには画像データを渡すことがある。そこでエムエスピーの希望番号システムでは、ドキュメントスキャナーでスキャンして、画像およびOCRデータを渡せるようになっているという。
今後に向けてエムエスピーで取り組んでいるのが、自動車の登録にまつわるさまざまな書類のデータ化とチェックだ。エムエスピーの登録必要書類管理システム「登録コンシェルジュ」では、自動車の登録に関わる、印鑑登録証明書(印鑑証明)や自動車保管場所証明書(車庫証明)、あるいは購入者の情報など、さまざまな書類やデータを管理し、ディーラーが漏れなく揃えるのをサポートする。
ただし、ディーラーの営業マンが入力した情報は、入力間違いもしばしば起こるという。そこで、印鑑証明をドキュメントスキャナーで読み込んでOCRでデータ化し、氏名や住所などをチェックするものを開発している。ただし、印鑑証明のフォーマットが自治体ごとにまちまちなことが課題だ。書類のこの座標に住所が書かれている、といったことを個別に設定する必要があるが、自治体の数が多く難しいのだという。そのため、現在はAIを使った方法などを試しているとのことだった。
そのほか、自賠責保険の書類をスキャンして期間をチェックする仕組みや、車庫証明の所在図を手書きしたものをスキャンして清書する仕組みなども構想していることを、大橋氏は紹介した。一部で電子化も行われつつ、まだ紙の書類が中心な自動車の登録関連の事務において、コダック アラリスのスキャナーはこれからもさまざまな分野で活躍しそうだ。
関連リンク
株式会社エムエスピー/エムエスピー販売株式会社
https://kmsp.jp/works/